パルツィヴァル - エピソードとエコー     第8回目の公演  2007年7月12日(木)
        (Parzival - Episoden und Echo)
     − クレティアン・ド・トロワとヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの原作によるジョン・ノイマイヤーのバレエ  

音楽 ジョン・アダムズ
リヒャルト・ヴァーグナー
アルヴォ・ペルト
振付・演出
衣裳・照明設計
ジョン・ノイマイヤー
舞台美術 ペーター・シュミット 指揮 サイモン・ヒューウィット
バリトン クライヴ・ベイリー オーケストラ フィルハーモニカー・ハンブルク


パルツィヴァル  エドウィン・レヴァツォフ
ヘルツェロイデ  クシャ・アレクシ
ガハムレット  アミルカール・モレ・ゴンザレス
漁師の王  カーステン・ユング
オルゲルーゼ  ラウラ・カッツァニガ
隠者  ピーター・ディングル
笑わない姫  アンナ・ラウデーレ
イテール、赤い騎士  ステファーノ・パルミジャーノ
ゴルネマン  セバスティアン・ティル
ガウェイン  ヨハン・ステグリ
ボハルト  ティアゴ・ボーディン
ライオネル  コンスタンティン・ツェリコフ


鳥  アーニャ・ベーレント、スカイ・ハリソン、ステラ・カナトゥーリ、カロリーナ・マンクーソ、大石裕香、リサ・トッド、アンナ・レナ・ヴィーク、マリアナ・ザナットー
ジョゼフ・エイトキン、アントン・アレクサンドロフ、シルヴァーノ・バロン、アントナン・コメスタッツ、オーカン・ダン、ヤロスラフ・イヴァネンコ、草野洋介、パーシヴァル・パークス、コンスタンティン・ツェリコフ
戦士  ジョゼフ・エイトキン、アントン・アレクサンドロフ、シルヴァーノ・バロン、アントナン・コメスタッツ、オーカン・ダン、エミル・ファスフットディノフ、ウラディミル・ハイリアン、マティアス・イアコニアンニ、ヤロスラフ・イヴァネンコ、ウラディミル・コシチュ、草野洋介、ステファノ・パルミジャーノ、パーシヴァル・パークス、ヨハン・ステグリ、コンスタンティン・ツェリコフ、キラン・ウェスト、ジョエル・スモール
アーサー王の宮廷  パトリシア・ティッツィ
ジョージーナ・ブロードハースト、イリーナ・クロウグリコヴァ、アンナ・ラウデーレ、ステファニー・ミンラー、アンナ・Rabstzyn、リサ・トッド、ミリアナ・Vracaric、ディナ・ツァリポヴァ
ティアゴ・ボーディン、ヨハン・ステグリ、コンスタンティン・ツェリコフ
ジョゼフ・エイトキン、オーカン・ダン、エミル・ファスフットディノフ、ウラディミル・ハイリアン、パーシヴァル・パークス、キラン・ウェスト
聖杯の騎士たち  ジョゼフ・エイトキン、アントン・アレクサンドロフ、シルヴァーノ・バロン、オーカン・ダン、ピーター・ディングル、エミル・ファスフットディノフ、ヤロスラフ・イヴァネンコ、ステファノ・パルミジャーノ、パーシヴァル・パークス、ヨハン・ステグリ、コンスタンティン・ツェリコフ
美しい婦人たち  アーニャ・ベーレント、スカイ・ハリソン、イリーナ・クロウグリコヴァ、カロリーナ・マンクーソ、ステファニー・ミンラー、大石裕香、アンナ・Rabsztyn、パトリシア・ティッツィ、ミリアナ・Vracaric
Zwei、die helfen マティアス・イアコニアンニ、草野洋介
人々  ジョージーナ・ブロードハースト、アーニャ・ベーレント、スカイ・ハリソン、マリッサ・ヒメネス、イリーナ・クロウグリコヴァ、アンナ・ラウデーレ、カロリーナ・マンクーソ、ステファニー・ミンラー、大石裕香、アンナ・Rabsztyn、パトリシア・ティッツィ、リサ・トッド、ミリアナ・Vracaric、アンナ・レナ・ヴィーク、ディナ・ツァリポヴァ
ジョゼフ・エイトキン、アントン・アレクサンドロフ、シルヴァーノ・バロン、アントナン・コメスタッツ、オーカン・ダン、エミル・ファスフットディノフ、ウラディミル・ハイリアン、マティアス・イアコニアンニ、草野洋介、パーシヴァル・パークス、コンスタンティン・ツェリコフ

この作品の問題点はジョン・アダムズの音楽だ、というのがまずあります。もちろんジョン・アダムズに問題があるのではなくそれを選択したジョン・ノイマイヤーにあるのだということになります。大音量とシンパシーの持てないメロディー、何でまたこんな選択をしたのでしょう。ワーグナーを意識しすぎたのでしょうか? 美しい作品なのに残念です。
前半はパルツィヴァルの体験、後半は彼が感じたことが表現されています。それでエピソードとエコーです。あらすじはこちら
もともとパルツィヴァルは純粋で無知な少年という設定なので、エドウィン・レヴァツォフにぴったりです。光り輝く騎士団を目にして夢中になったり、イテールを倒し赤い甲冑を手に入れて有頂天になったり、アーサー王の宮廷で回りのものに目を丸くしたり、ほんとうにぴったりなのです。漁師の王に会って、どうすることもできずに走り去るのは、まさに彼そのもののようだ。
ただ後半の表現になると少し苦しいところが見られる。名誉や栄光を手に入れたようには見えず、ただ自信なさげで無知なままなのだ。ほとんどステージ上にいて全幕を踊りきったといっていいのは若さのなせる技だろうか。背が高くがっしりしているので、比較的に華奢な男性ダンサーが多いハンブルク・バレエでは貴重な存在だ。頑張れ、レヴァツォフ! 私は君の苦しみの表現を楽しみにしていますよ。
時系列で印象を書きますね。
最初のシーンでパルツィヴァルの世界を象徴する鳥たちはとても美しく、ノイマイヤーが、影とか大気などを表現するこのような役を私はとても気に入っている。彼が目にする騎士団は違う世界から現れたような出現の仕方で、ここでパルツィヴァルは全く違う世界を目にすることが良くわかる演出だった。
ヘルツェロイデはもともとアンナ・ポリカルポヴァに振付けられたものなので、クシャ・アレクシの動きを見ているとそれがメチャクチャ見えてくる。ガハムレットとの死と記憶のpddは音楽と共に切なさが伝わってくる。
パルツィヴァルはアーサー王の宮廷を訪れる途中でイテールと戦い、赤い甲冑を手に入れるのだが、スナップを外す甲冑なので奪い取るのは簡単だったのだけれど意外とそれを見につけるのには悪戦苦闘。このシーンが終わるまでには着終ることができていませんでした。ここではエドウィン君思い切り暴れて踊っていました。
さてアーサー王の宮廷に到着する(このときは赤い甲冑をきちんと身につけていました。舞台袖できっと衣裳さんか誰かが手を貸したのね)も、一体誰がアーサー王だったのか私には不明。それを示唆するシーンがあったかどうかも覚えていないのだが。さてそこでパルツィヴァルの教育係となるのが眼鏡をかけたゴルネマン(セバスティアン・ティル)で、彼が騎士の心得として、自分の名誉を貶めるより沈黙を守れ、すなわち“みだりに人にものを尋ねるのは失礼である”との教えを授けるシーンでの唇に人差し指を当てる仕草はとても魅力的でした。
笑わない姫がパルツィヴァルを見て笑う様はちょっとエキセントリックな印象を受けたましたが、その後のペルトの音楽によるpddは少し子供っぽさ残るものでした。
そしてさらに旅を続け、漁師の王アンフォルタス(カーステン・ユング)と出会い、彼の苦しみに気づくも、子供であることとゴルネマンの教えを守るパルツィヴァルは逃げ出すわけですが、為すすべもなく僕どうしよう、と戸惑う表現はエドウィン・レヴァツォフにしかできないように思います。素顔のエドウィン君はどうなんだろうと、思わず思ってしまいます。この場面のカーステンの苦しみの表現は少し物足りなく思いました。またこの場面でカーステンがキリスト、そのもとに使徒たちが一列に並んで座る、というマタイ受難曲の1シーンがあったのにはびっくり。同じようなシーンはレクイエムにもありますが、漁師の王は聖杯城の王ではあるのだが、キリストではないのだからちょっと違和感があるなあ。
戦った騎士たちを癒すのは女性で、パルツィヴァルはオルゲルーゼ(ラウラ・カッツァニガ)によって癒されるのですが、あまり濃密な愛は感じられませんでした。
(この項続く、S)